Back

進化する産業機器向けSub-GHz無線通信

04/04/2024

スマートメーターや火災報知器、セキュリティシステムなど、私たちの生活を支えるさまざまな機器が「Sub-GHz無線通信(通称:サブギガ帯)」と呼ばれる無線通信技術でつながり始めています。Wi-Fi®やBluetooth®に比べ、Sub-GHz無線通信は「長距離通信」、「低消費電力」、「障害物に強い」、「マルチホップ通信対応」といった特長を持ち、IoTによる社会全体のスマート化を実現するキーテクノロジーとして注目が高まっています。

今回は、そんなSub-GHz無線通信の仕組みや他の無線通信技術との比較、具体的な導入事例などをご紹介し、この技術がもたらす未来の社会を探っていきます。

※Wi-Fiは、Wi-Fi Allianceの商標又は登録商標です。
※Bluetoothは、Bluetooth SIGの商標又は登録商標です。

目次


1. Sub-GHz無線通信の4つの特長

Sub-GHz無線通信とは、1GHz未満の周波数帯を利用する無線通信技術のことです。
一般的な認知度はWi-Fi®やBluetooth®にはまだまだ及びませんが、Sub-GHz無線通信は、私たちの生活を支えるさまざまな分野のアプリケーションで採用が進んでいます。

さまざまなアプリケーション・用途で採用が進むSub-GHz無線通信

Sub-GHz無線通信がIoT社会のキーテクノロジーといわれる理由は、従来のWi-Fi®やBluetooth® を上回る4つの大きな特長にあります。

1. 長距離通信

Sub-GHz無線通信の特長の一つ目は、長距離通信が可能なことです。
電波は周波数が低いほど障害物に回り込みやすく、壁や床などの影響を受けにくくなる性質があるため、長距離電送に有利です。Sub-GHz無線通信は周波数が1GHz未満と非常に低いので、Wi-Fi®やBluetooth®などで使用される2.4GHz帯、5GHz帯よりも長距離通信に適しており、見通し距離で数10km、都市部でも数kmに及ぶ通信が可能です。

2. 低消費電力

周波数が低いと送信に必要なパワーが少なくて済むため、消費電力を抑えられるのもSub-GHz無線通信の大きな利点です。特に電池駆動の機器に適しており、Wi-Fi®やBluetooth®などと比べて、数倍から数十倍もの電池寿命を実現します。

3. 障害物に強い

電波が障害物に回り込みやすく、壁や床などの影響を受けにくいSub-GHz帯は、安定した通信が可能です。 Wi-Fi®、Bluetooth®、電子レンジなど現在多く使用されている2.4GHz帯の既存機器と干渉せずに通信が可能です。

「低消費電力で遠くまで飛ぶ」Sub-GHz無線通信

4. マルチホップ通信に対応

Sub-GHz帯は、中継器を介して通信を行う「マルチホップ通信」に対応していることも大きな特長です。マルチホップ通信によって、通信距離をさらに延長したり、電波が届きにくい場所でも通信を可能にすることができます。また、マルチホップ通信は、設置コストの削減(基地局よりも安価に中継器を設置できる)や、災害にも強い(災害で基地局が損壊しても、中継器があれば通信可能)という面からも普及が進んでおり、それに伴って、Sub-GHz無線通信の利用範囲も拡大しています。

マルチホップ通信対応で、トラブルや増設にも強い

▼ご参考ページ
Sub-GHz無線とは | Sub-GHz無線の概要 | TechWeb

2. Sub-GHz無線通信の規格

Sub-GHz無線通信には、それぞれ異なる特徴を持つさまざまな規格が存在します。
例えば、高速・高信頼な通信が必要な場合は「Wi-SUN®」、極めて低消費電力で長距離通信が必要な場合は「Sigfox®」、柔軟なネットワーク構成と長距離通信が必要な場合は「LoRaWAN®」、低消費電力で短距離通信が必要な場合は「Zigbee®」といったように、用途に応じて適切な規格を選択する必要があります。

※Wi-SUNは、Wi-SUN Allianceの商標又は登録商標です。
※Sigfoxは、UNABIZの商標又は登録商標です。
※LoRaWANは、Semtech Corporationの商標又は登録商標です。
※Zigbeeは、Connectivity Standards Allianceの商標又は登録商標です。

3. Sub-GHz無線通信の課題

Sub-GHz無線通信は多くの可能性を秘めた技術ですが、Wi-Fi®やBluetooth®などの無線通信技術と比べてデータ転送速度が遅いことや、国によって利用可能な周波数帯が異なるため、グローバル展開が難しいなどの課題がありました。

Sub-GHz無線通信をより便利に、より安心して使用するためには、これらの課題を克服することが求められています。そして今、スマートメーターや火災報知器等のSub-GHz無線通信を使用するアプリケーションの交換時期に伴って、技術が大きく進化しつつあるのです。

4. Sub-GHzが拓く未来1: 次世代スマートメーター

Sub-GHz無線通信を使った代表的なアプリケーションの一つが、スマートメーターです。
スマートメーターを導入することで、電力会社側は、検針業務の効率化や電力需給の適切な調整、送電網の運用を最適化できるなどのメリットがあり、利用者側も、電力使用量の見える化によって、節電や電気料金の節約を図れるようになります。
そんな便利で優れたスマートメーターですが、機器の寿命は運用開始から約10年。
多くの国々で次世代スマートメーターへの交換時期が訪れています。

次世代スマートメーター要求仕様

次世代スマートメーターに求められるのは、高速通信と低消費電力の両立。さらには国際標準化への対応です。そして、それを可能にするのが、より進化したSub-GHz無線通信LSIです。

なかでも、次世代スマートメーターに採用される通信規格としては特に、低価格・低消費電力・長距離通信に特化したLPWA (Low Power Wide Area)であるSigfox®への注目が高まっており、Sub-GHz無線通信LSIもSigfox®対応製品の需要が伸びています。

Sigfox®は、世界70カ国以上でサービスが提供されていることから、国境を越えたシームレスな通信も可能な上、低価格であることから、大量のデバイスを接続するIoT用途に最適な通信規格。
ロームでもSigfox®に対応可能なSub-GHz無線通信LSIのラインアップを拡充しています。

例えば、ロームのLAPIS TECHNOLOGY™を活用した、Sigfox® 対応のSub-GHz無線通信LSI「ML7425」は、優れた受信感度特性と、選択度のある広い水晶範囲(XTALあるいはTCXO)が特長の無線LSIで、国内外から多くの高評価をいただいています。

LAPIS TECHNOLOGY™ ML7425の特長

5. Sub-GHzが拓く未来2: 進化するセキュリティシステムへの対応

スマートメーターだけでなく、火災報知機やセキュリティシステムにも、故障や電池切れによる交換需要 とともに次世代仕様の波が到来しています。火災報知機やセキュリティシステムは、生命にも直接関わってくるものだけに、より高度なシステムへの要求が高まっており、これからの需要増加が見込まれます。

従来の火災警報器は火災感知のみ、セキュリティシステムは侵入感知のみなど、機能が単一に限定されており、他のシステムとの連携や情報共有は困難なものでした。また、煙や虫などの影響による誤動作が発生しやすいことや、設置や運用にコストがかかることも課題となっていました。

そこで、これらの課題を克服する、次世代セキュリティシステムが続々と登場しています。

例えば、火災報知器では、煙だけでなく一酸化炭素(CO)を検出したり、温度や湿度、占有率、周囲光などを検出するセンサーを兼ね備えたものや、水漏れ感知やガラス破損感知などの機能も備えているものがあります。総合セキュリティシステムでは、電源工事不要で設置でき、スマホからでも簡単に操作できるものなどが続々と登場しています。
こういった次世代セキュリティシステムは、スマートホームシステムなどと連携することで、より安全で高度な運用の可能性が広がり、被害を大きく減少させることにつながるとともに、AIによる誤作動防止やIoT技術による低コスト化などが期待されています。

そして、ここでもやはり、キーテクノロジーとなるのが、進化したSub-GHz無線通信LSIです。
従来の有線式から、配線不要の無線式になるため低消費電力であるのはもちろんのこと、高速で高頻度のデータを取得し、より安定した通信を保持することは必須といえます。

さらに、先にご紹介したSub-GHz無線通信LSI「ML7425」は、複数の無線チャネルを高速に受信処理できる機能を搭載しています。これは、例えばホームセキュリティでホームゲートウェイ(親機)と各種端末(家電、窓・ドアセンサ等)間で繰り返される通信など、親機と複数子機間での交信を素早く処理する必要があるようなアプリケーションに非常に有効です。また、高速処理によってCPU負荷が軽減するので、システムの低消費電力化や、CPUリソースをいち早く他の処理に移行できることにもつながります。

次世代セキュリティシステムへの対応

また、高速通信が可能になると、データ通信を短時間で処理できるようになるので、無線(RF)の総電力を抑えられたり、無線を制御するマイコン(MCU)なども早くスリープ状態に移行できるなど、システム全体の低消費電力化に貢献し、さらにはバッテリーの小容量化、小型化、製品の低コスト化、長寿命化にも寄与します。

そこでロームでは現在、幅広い帯域で世界各国の仕様にグローバルに対応可能な超低消費電流無線SoC(System on a Chip)を開発中です。
業界最小レベルの小型パッケージ(6mm x 6mm)で、業界最高水準の低消費電流を実現した上で、Sigfox® Monarch対応(周辺部品定数共通、高出力PA搭載、RC1~RC7サポート)で、次世代セキュリティシステムやインフラ監視用途をはじめ、バッテリー駆動が求められるさまざまな用途での採用を目指しています。

現在開発中の超低消費電力 SoC

6. Sub-GHzが拓く未来3: スマート社会の発展

Sub-GHz無線通信の活用は、スマートメーターやセキュリティシステムだけに留まりません。
社会全体のスマート化を実現する重要な技術として、さまざまなサービスへの貢献が期待されています。

例えば、スマートシティやスマートファクトリー、スマート物流、スマート農業などの現場では、すでにSub-GHz無線通信を用いたアプリケーションが運用されていますが、他にも、セキュリティシステムなどと連携した高齢者向けの高度な見守りサービスや、インフラ監視、災害対応など、あらゆる分野での活用の幅が広がることでしょう。

Sub-GHzが拓く未来

7. まとめ

Sub-GHz無線通信は、ここに挙げた以外でも、IoT(Internet of Things)やM2M(Machine to Machine)、ワイヤレスセンサネットワークなどをはじめ、幅広い分野での採用が進んでいます。今後もロームはLAPIS TECHNOLOGY™を活用し、みなさまのニーズにお応えするさまざまなSub-GHz無線通信LSIを開発していきます。どうぞご期待ください。

商品紹介・詳細情報、その他のリンクなど

Sub-GHz LSI, SoC

Sub-GHz LSI

ML7425

Sub-GHz無線 | TechWeb

電気スマートメータ -アラゴ回転盤方式

電気スマートメータ -CT方式

火災報知機(家庭用)

ガス漏れ警報器(家庭用)

Tags

Tags

New Articles

New Articles

Archive

Archive